紛争影響地域での人材育成、産業復興を通じた平和構築と開発支援

長期化するミンダナオ島での紛争
フィリピンのミンダナオ島は、イスラム教徒(モロの人々)や、多様な先住民族が住む地域でしたが、他島からの大規模な移住により、多くが土地や生活手段を失いました。1970年代に始まったモロ民族解放戦線(MNLF)による独立や自治を求める武装闘争に始まり、長い紛争の影響を受け、ミンダナオは国内でも最も貧しく、開発の遅れた地域となっています。2014年、フィリピン政府とMNLFから分派したモロ・イスラム解放戦線(MILF)との間で包括的和平合意が締結され、バンサモロ基本法と自治政府成立を目指し政府とMILFの交渉が進められています。
紛争影響地域における開発支援においては、長い紛争で分断された社会の絆の回復に貢献することが重要です。特にミンダナオの紛争は、多様な民族間、氏族間、宗教や政治グループ間の対立、また島嶼部などの遠隔地との地域格差も深刻な課題となっています。
紛争影響地域での開発支援

例えば、ミンダナオの自治政府設立に向け、行政官となる人材の育成や(「モスリム・ミンダナオ自治区(ARMM)人材育成プロジェクト」)、農業、水産、畜産などの地場産業を調査し、同地域における優良産品の掘り起こしをしました(「モスリム・ミンダナオ自治区(ARMM)地場産業振興調査」)。MILFとその復興・開発機関であるバンサモロ開発庁に対しては、給水施設など小規模インフラの整備(「ミンダナオ紛争影響地域社会経済復興支援調査」)や、コミュニティ開発のための人材育成と仕組みづくり(「ミンダナオ紛争影響地域コミュニティ開発のための能力向上プロジェクト」)、中長期開発計画策定(「バンサモロ包括的能力向上プロジェクト」)を通じた支援を行っています。また、和平促進のため、現地自治政府、MILF幹部、地元有力者、NGOなど地域人材ネットワークづくりに貢献するとともに、ビジネスを通じた継続的な社会発展の可能性の検討を続けています。
信頼醸成が平和構築の第一歩

人や国の不平等をなくそう
ミンダナオの平和の為には、多様な民族、氏族、異なる宗教、政治グループ間の信頼醸成、民族間、地域間の格差の解消が重要です。「ミンダナオ紛争影響地域コミュニティ開発のための能力向上プロジェクト」では、島嶼部を含む、民族、文化の異なる3地域約300名の住民が、野菜栽培、ティラピア養殖、海藻・ナマコ複合養殖、ヤギ生産といった生計向上活動や、道路改修・補修活動に参加しました。活動では、生計向上、生活改善に直結する技術を提供すると同時に、多様な背景を持つ人々が共同で学び働く機会を作りました。活動を通じて、それまで交流することがなかったイスラム教徒とキリスト教徒や、MNLF派とMILF派の住民が、共に農業組合を結成し活動を続けています。
これはSDGs10の目標「人や国の不平等をなくそう」に対してアプローチしている課題でもあります。引き続き格差をできるだけなくし、ミンダナオ島の全ての人たちが公平に、平和と開発の利益を享受できる生活を作ることを目指したいと思っています。
本件に関する外部リンク先
https://www.jica.go.jp/oda/project/1102979/index.html
https://www.jica.go.jp/press/2015/20150827_01.html