「国家保健モデル」に基づくプライマリーヘルスケア体制強化

高い乳児・妊産婦死亡率
中米のホンジュラスは、乳児死亡率や妊産婦死亡率の割合が中米近隣諸国と比較しても高い状況にあります。その理由は、都市部と農村部の地域格差が大きいことや、住民の医療施設へのアクセスが農村部で非常に限られていること、またこれまで治療が重視され、予防や健康に関する啓発活動が十分に行われてこなかったことがその原因と考えられています。
近年の中南米諸国では、健康であることを基本的な人権として認め、全ての人が健康になること、そのために地域住民を主体とし、人々の最も重要なニーズに応え、問題を住民自らの力で総合的にかつ平等に解決していくプライマリーヘルスケア(PHC)のアプローチが主流となっています。ホンジュラスでもこのPHCの考えに基づき「国家保健モデル」が策定されました。その目標は、PHCの強化を通じ、農村部の住民を含めてより質の高い保健医療サービスを届けることであり、その政策の中核となるのが医師・看護師などを構成員とする家庭保健チームの導入です。
ホンジュラス国のPHCの基礎の確立を目指して

PHC強化の価値を再確認
プロジェクトで開発した家庭保健チーム用のガイドラインとマニュアルは、パイロット地域での実証結果が認められ、どちらも保健大臣の正式な認定を得ることができました。これは、プロジェクトの活動を通じて、ホンジュラス国のPHC実践に関する初めての方法論の確立が達成されたと言えます。

PHCの導入による新たな可能性をめざして
家庭保健チームの活動を中心においたPHC活動が定着することは、ホンジュラスの保健医療サービスの大きな転換となります。家庭保健チームが地域の中で活動をすることは、これまで保健医療サービスへのアクセスが困難であった住民を包摂し、さらには、より住民のニーズに沿ったサービスの提供を可能とするでしょう。これは、SDSs目標の3「すべての人に健康と福祉を」に貢献するものです。
今後は、妊産婦へのケアに加えて、家族という視点からよりきめ細かいケアも必要となります。例えば、糖尿病患者の場合、患者自身だけでなく家族への支援を強化するような取り組みも視野に入れる必要があります。また、例えば、アルコール中毒、障がい者、難病、家庭内暴力などを抱える家族に対する支援方法の導入も必要となっています。
PHCの促進においては、サービスを受ける側の主体的な参加が重要です。住民たちもまた、自分たちのコミュニティの保健課題を理解できるようになり、解決に向かって行動する必要があります。医師や看護師といった医療サービスを提供する側とサービスを受ける側の住民が、家族とコミュニティの健康増進に向い互いに努力するよう、地域保健のさらなる強化に取り組んでいきます。
本件に関する外部リンク先
日本語 https://www.jica.go.jp/project/honduras/002/index.html
西語 https://www.jica.go.jp/project/spanish/honduras/002/index.html