課題別研修「ジェンダー・多様性と災害リスク削減」コース

対象地域の現状と問題点
毎年のように日本含む世界各地では様々な自然災害が起きています。自然災害による被害の内容や度合いは全ての人にとって同様ではなく、女性や子ども、高齢者、障害者等の脆弱な立場に置かれた人々が特に影響を受けやすいのが現状です。そこで、第3回国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組2015-2030」では、災害リスクに対して、より広範で、より人間を中心にした予防的アプローチがなくてはならず、脆弱な立場の人々に対する包摂的なリスク削減の取組が必要であることが認識されました。また、同枠組みでは、防災に関する政策・計画等の策定と実施の際には、予防、緊急対応、復旧・復興の各段階において女性が能力を発揮できるように、女性の能力向上のための施策の実施が重要であることが記載され、女性のリーダーシップ向上の必要性が謳われました。
そこで日本政府は、同会議において「仙台防災協力イニシアティブ」を発表し、その具体的な施策の1つとして「防災における女性のリーダーシップ推進研修」の実施を表明しました。 政府のイニシアティブを受けてJICAは、アジア・中東・ラテンアメリカなどの国々のジェンダー・防災の鍵となる意思決定者や関係機関の従事者を日本に招き、課題別研修コースを立案・実施しています。当社は、JICAからの委託を受けて実施機関として本研修を運営しています。
ICNの仮説と取り組み

本研修では、ワークショップや視察、講義内のディスカッションを通して、ジェンダーと多様性の視点に立った予防、緊急対応、復旧・復興について、日本と参加国の被災経験から、課題および優良事例を互いに学び合い、ジェンダーと多様性の視点に立った災害対応能力の強化及び女性の参画について理解を深めます。さらに、本研修では、「関係機関の連携」を狙いの一つとし、研修員を各国、防災担当機関、ジェンダー担当機関、NGOのそれぞれから選ぶことを促しています。本研修のもう1つの特徴は、研修員が抱える問題を個々のものとして捉えるのではなく、「国」という枠でとらえることです。コースの最後に作成するアクションプランも、研修員別だけでなく、国別に課題解決の方法を考えて作成していきます。これにより、研修員が共に計画を練ることで、連携の重要性を認識すると同時に、帰国後、防災担当機関、ジェンダー担当機関間の連携、官とNGOの連携の促進に貢献することを期待しています。
取り組みの成果
- 日本での取り組みを学ぶ上で基礎となる知識の習得
- 日本の防災とジェンダー多様性の視点に立った行政の取り組みを学び、日本と参加国で政策や制度面で取り組むべき課題を整理する
- 日本の女性や多様な関係者の参画とリーダーシップの実践例を学び、日本と参加国が多様な関係者の参画とリーダーシップを推進する上での課題を整理する
- 日本と参加国の研修員間で、相互学習した内容を基に国別にアクションプランが作成される
コースの前半に東京で実施されるジェンダーや防災等の専門家の講義から得た基礎知識、そしてコース中盤に行われる仙台、南三陸での視察や災害を経験した様々な立場の方を招いて行われた公開イベント、参加国から学んだ優良事例や様々な意見交換などを通じて、コースの最後には高いレベルで目標を達成することができました。
もちろん一番の狙いは研修員が帰国後に学んだことを実際に活かすことです。本研修の研修員は学んだことの共有だけに留まらず、帰国後に自国の法律、上位計画への反映や県レベルでの意識啓発の実施など運用にもすでに着手しており、本研修で学んだ成果が少しずつ表れています。

今後の展望
世界の様々な立場の人々が様々な状況においても取り残されずに、安心して持続的な生活が送れるように、本研修は今後も一歩一歩工夫をしながらジェンダーと多様性の視点に立った災害リスク削減に取り組んでいきます。