Achievements

実績

辺境地域でのコミュニティによる妊産婦・新生児への保健システムの強化

アプローチ
地域
国名 ガーナ
SDGs すべての人に健康と福祉を
クライアント 独立行政法人国際協力機構(JICA)

辺境地域での保健・医療施設へのアクセスの難しさ

ガーナのアッパーウェスト州は、首都から車で13時間内陸に入った、ブルキナファソと国境を分ける最北端にあるガーナの最貧州の一つです。農業や牧畜を中心とした生活で、道路の整備などインフラも十分に整っていません。また村のチーフや長老を中心とした伝統の残る保守的な地域です。そのため、地理的のみでなく、財政的、文化的な理由により、保健サービスへのアクセスが限定されており、妊産婦や新生児の死亡率がなかなか改善されない状況です。ガーナ政府は、この保健サービスへのアクセスの格差を是正するため、駐在地域保健師による基本的保健医療サービス(Community-Based Health Planning and Services:CHPS)政策 ゾーンを設立し駐在地域保健師を置いて、健康教育・住民参加促進・リファラルなどの保健医療サービスを実施する戦略を進めています。CHPS のユニークなところは、患者を待つのではなく、コミュニティを訪問して検診・予防啓発活動を行うこと、コミュニティが計画した保健活動をコミュニティ自身が実施するのを支援するところにあります。しかし、CHPSのコミュニティ・カバー率は、行政の支援不足、CHPSゾーンに派遣される地域駐在保健師の数や能力の不足、コミュニティの参加度合いの低さなどにより停滞していました。

アイ・シー・ネットは、長年保健分野の支援に携わってきた経験を活かし、「アッパーウェスト州地域保健強化プロジェクト」に取り組み、CHPSシステムを強化しました。このCHPSシステムを基盤として、コミュニティの保健・医療施設へのアクセス改善と住民参加の促進による行動の変容を図り、SDGs3に掲げられた母子保健の強化に取り組んでいます。

 

行政のシステム強化とコミュニティでの母子保健活動の活性化

ガーナでは州以下の保健行政は州、郡が保健プログラムの管理と運営、亜郡保健センターとCHPSゾーンが保健医療サービスの実務を行っています。プロジェクトでは、州・郡に対してはCHPSシステムの実施や母子保健関連活動の運営と管理、特にモニタリングや医療従事者への研修能力の強化を行いました。実務レベルの保健センターや駐在地域保健師に対しては、産前、分娩、産後、新生児ケアを含んだ安全な母性研修の実施や機材配付によるサービス提供能力を強化しています。また、難しいお産の時に必須となる上位の医療機関へのリフェラル・システムの強化、妊産婦や新生児死亡症例から学ぶ症例検討会の実施支援を行いました。

これら保健行政機関の支援と同時に、州調整委員会や郡議会と保健行政機関との会議を開催して他の行政機関との連携を強化しました。またコミュニティへの啓発活動を行うためにコミュニティ向けの視聴覚教材を作成し、地域駐在看護師を通した啓発活動も行っています。このように、保健・医療サイドの能力強化だけでなく、行政とコミュニティへのアプローチも行うことにより、行政による支援の促進、コミュニティによる保健医療施設の活用促進や保健活動の活性化を進めています。

 

CHPS システムの拡大と母子保健指標の改善

2011年には91だったCHPSゾーンは、2016年には212に倍増し、辺境地域での保健サービスへのアクセスが改善されました。さらに、保健センター、CHPSの母子保健サービスの向上により健診の受診も増加しています。妊娠3カ月以内の最初の産前健診を受診した妊婦の割合は2010年には47.1%だったものが、2015年には77.5%に、熟練医療従事者の介助による分娩も48.8%だったものが83.4%に、分娩後48時間以内に第1回産後健診を受診した母親・新生児の割合も77.5%に改善されています。このようにアクセスの改善による検診の数と質の強化、分娩施設のスタッフの出産介助技術の強化、そしてリフェラル機能の強化により、妊産婦死亡比は、国の保健データによれば、2010年に出生数10万当たり212.0人だったのが、2015年には155.8人まで減少しました。SDGs3の3.1と3.2の重要なターゲットである妊産婦や新生児の死亡率削減に、大きく寄与しています。

 

コミュニティ、行政と医療従事者の協力

母子保健に限らず、保健はサービスを提供する保健医療施設の整備やスタッフの能力強化だけでは改善しません。サービスを活用する住民やコミュニティが、保健施設を十分に活用し、かつ自分たちで自分の健康を守る自助努力が重要です。また保健医療施設には電気や水道、薬や器具が必要で、行政が必要経費の予算を継続的に確保することも大切です。このように全てのレベルが協力して、保健の問題と活動の優先事項を共有し、対策を実践することで、継続的な質の高い保健サービスの提供と住民のアクセス改善が期待できます。

これはSDGs3の目標「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」で示された課題でもあります。プロジェクトは、あくまでもガーナの人たちが自分自身による活動を始めるための推進剤であり、プロジェクトが終わった後でも、ガーナの人たちによる活動が続くようなシステムを作りたいと思っています。CHPSシステムはコミュニティに医療従事者側が居住して住民の健康を守り、CHPSを住民が支援して機能するというユニークなシステムです。将来のアフリカの保健指標の改善に大きな可能性のあるCHPSシステムの強化と、その継続性をいかに担保していくかが今後の課題です。

本件に関する外部リンク先
https://www.jica.go.jp/project/ghana/006/outline/index.html

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